RAB☆Kブログ

幻の味を求めて三千里


「やっぱり、サンラータン麺にしよ」。K余さんは、少し迷ってからメニューを選んだ。もしかして、あの味かもしれないと思って。

話は35年ほど前にさかのぼる。ニューデリーのわが家から歩いて行けるところに、日本で言う町中華があった。名前は「さくら」と言った。

もともとは中国風の店名だったが、中印紛争の際、焼き討ちにあうといけないと、インドの中華料理店はみな日本風の名に変えたという伝説がある。

そこのサンラータン麺は、青唐辛子が入る激辛だった。それにK余さんははまった。

以後、日本でもヨーロッパでも、その味を求めつづけている。いま出雲で、あの味に出会える確率はほとんどない。それでも試さずにはいられない。

気候や衛生事情がきびしい国だった。ぼくは出張だらけで留守にする家で、幼ない子どもたちを育てていた。そんな日々のなか、家族水入らずで「さくら」へ行ったのは、幸せな記憶として、サンラータン麺の味とともに、K余さんの脳裏に刻まれているのだろう。

先日行った店の麺は、まったくの別物だった。それでも、K余さんはあの味を追い求めていく。


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