RAB☆Kブログ

あれから25年


地下鉄サリン事件から、きょう3月20日で満25年となった。そのころぼくは、旧西ドイツの首都ボンに駐在していた。支局へ着きCNNテレビをつけると、東京の地下鉄で化学物質による無差別テロがあったようだった。しかし、CNNを観てもTOKYO発の外電を読んでも、事件の背景や犯人像がさっぱりわからない。
 
東京本社へ電話してO記者に「どうなってんの?」と聞いた。「たぶんオウム真理教の仕業だろうけど、決め手がないから書けないんだよ」。そういうことか。でもオウムがあれほどのテロを起こすカルト教団だったとは。
 
捜査当局はオウム真理教の本格捜査に踏みきり、やがて富士山麓のサティアンで麻原彰晃らを逮捕する。そこに至るまでのある日、東京本社から「ボンにオウムの支部があるから、すぐ当たってくれ」と電話が入った。ぼくは空路出張する予定だったが、まだ時間の余裕があったので、タクシーで空港へ向かう途中その支部へ寄った。
 
すでにドイツをはじめ各国の記者たちが集まり始めていた。ひとりだけいた信者は、殺気立つ報道陣におどおどしていた。ぼくはたまたま信者の隣に立ち日本語で話を聞いていたので、外国人記者らはぼくに説明を求めた。
 
ぼくはまったく知らなかったが、そのシーンが映像と写真で世界中に配信された。翌日、長野県の悪友から「いつオウム信者になったのぉ? こっちのテレビでは映像がガンガン流れてるよ」と国際電話がきた。もちろんジョークだが、おなじことはそれからずっと、あちこちで知り合いに言われた。
 
それより5年4か月前、横浜の坂本堤弁護士一家が失踪した。坂本さんはオウムの反社会性を批判・追及し「被害者の会」を組織していた。失踪現場にはオウム真理教のバッチが落ちていたが、捜査当局はオウムの犯行とは断定しなかった。
 
当時ぼくはニューデリーに駐在していた。翌年帰国して久しぶりに女性弁護士のMちゃんと会った。かつて英会話学校でいっしょに学んだ仲だ。雑談をしていたらMちゃんは坂本弁護士とおなじ法律事務所だという。「行方も安否もわからないので、ずっと情報を求めて休日返上でビラ配りなどをしていたの」
 
坂本弁護士がいつ復帰してもいいよう、事務所の机はそのままだそうだ。Mちゃんはそこへ案内してくれた。机の周囲には無事を祈る千羽鶴がびっしり飾られていた。
 
坂本さんは超のつく真面目人間で、「もう少し柔らかくしなきゃ」と同僚の男性弁護士が違法のエロ動画をVHSにダビングしてプレゼントしていたという。失踪したあと、それも警察が任意提出物として持って行った。「事務所のみんなは、あれ、やばいなぁ~と」
 
しばらくすると、警察から返却された。念のためみんなで再生して観たら、子ども番組『ひらけ! ポンキッキ』が延々と映し出された!
一家は行方不明のままだったが、サリン事件実行犯のひとりが、一家を殺害し新潟、富山の県境付近の山中に埋めたことを自供し、悲劇の真相が5年半後に明らかになった。
 
誰がエロ動画を『ひらけ! ポンキッキ』で上書きしたのかは、いまも謎のままだ。

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