RAB☆Kブログ

ノーサイドの後に


『やがて笛が鳴り、僕らの青春は終わる』という小説があった。三田誠広さんの作品で、角川文庫から1980年に刊行された。ぼくが新聞記者になって3年目のことだ。
 
小説の舞台は1975年(昭和50年)だった。大学のラグビー部に青春のぼぼすべてをかけた男子たちの話だ。むろん優勝を目指すが、それは学生としての最終試合でもある。部員たちはみな、ノーサイドの先に待つ自分たちの将来を考えている。
 
社会人となることに強い抵抗感を抱く学生たちがたくさんいて、「モラトリアム世代」と呼ばれていた。あるブックレビューにあるように、あのころはサラリーマンになることが敗北のように思われていた時代だった。
 
登場人物の一人が言う。「俺は満足をひきずりながら、灰色のサラリーマンになろうと思う」
 
ぼく自身も、大学を出ながら社会人になる勇気がなく、今で言うフリーターの道を選んだ。そして切羽詰まった後で、消去法によって新聞記者になった。
 
小説は、試合の流れを実況中継のようにつづり、そのなかに部員の青春=学生時代の友情や恋愛のエピソード、一瞬の輝き、そして不安や挑戦の心情をはさむ。
 
ラグビーのルールも知らずボールに触ったこともないのに、作品を読みながら、それは自分や友人たちのことを描いているのだと錯覚に陥った。
 
現代の若い社会人は、やはり灰色なのだろうか。
 
ぼくのサラリーマン=新聞記者生活は、幸運なことにバラ色の日々ではじまった。なんだ、社会人もぜんぜん悪くないな、と思いながら、でも小説に描かれる青春の不安もたしかに自分のなかにあったな、と思いながら一気に読んだ。
 
ラグビー日本代表“Brave Blossoms”(勇敢な桜の戦士たち)は、南アフリカに完敗し花と散った。でも、悲願だった堂々のベスト8だ。選手たちは、やりきったあとのすがすがしい表情をしていた。笛が鳴り青春=日本代表選手としての時間が終わった彼らは、どんな道を歩むのだろうか。

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